2010年06月13日

子供が読んだミステリー

 ルネ・クレールの『そして誰もいなくなった』を見て「名探偵が出てこないミステリー」の面白さに開眼したようなことを書いたが、実はそれ以前に出会って強烈な印象を受けた作品がある。
 学研の学習科学の増刊「読み物特集号」に載っていたもので、結末でずいぶん意表を突かれた外国作家の短篇があった。その「読み物特集号」はたしか姉が買っていたのが家にずっとあったやつだから、年齢が私より四つ上なら小学生時代にリアルタイムで読んだ人があるかもしれない。
 内容はアメリカの町で起きる煙草屋連続強盗事件の話で、意表を突かれたのは、それがいわば「叙述トリック」の作品だったからである。作中の人物にとっては特に意外なことは起きていないのだが、読者を騙す書き方がされていたことが最後にわかる仕組みで、そういうものに何の免疫もない(もちろん「叙述トリック」なんて言葉も知らない)子供が読んだのだから、騙されないほうがどうかしている。うわやられた何だこれは、である。
 ただ、そこで「名探偵が出てこないミステリー」の面白さに目ざめた、というふうにあまりならなかったのは、小学生のときからSFショートショートはけっこう読んでいて、ミステリー、推理小説、といった枠よりも「意外な結末の短篇」という意識でとらえていたからだろう。せいぜい、SFじゃなくてもこんなのがあるんだ、という程度の認識だったはずである。
 内容の記憶を頼りに大人になってから調べたところ、件の短篇はどうやらウィリアム・アイリッシュ(コーネル・ウールリッチ)の作品だったようである(創元推理文庫『アイリッシュ短編集』に収録されているはず)。ただし当方の記憶と照らし合わせると、「読み物特集号」に載ったものには大胆な改変がなされていた。子供向けにしたというだけではなく、結末の意外性にも大きくかかわってくることで、同じ話をまったく別の方向から語り直したものだといってよい。誰がリライトしたのか知らないがえらく思い切ったことをしたものだ。

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