2010年05月30日

やっぱり前半が面白い

『マトリックス』シリーズで面白いのは1作目の前半だけである。『ダークシティ』も圧倒的に面白いのは前半である。いずれも後半はおそろしく通俗的で古くさい展開にしぼんでしまう。例外は『A.I.』。これは逆で、人類が死滅した後の遥かな未来の地球を描く終盤のシークエンスが、お決まりの展開に終始するそこまでのお話にくらべて段違いに素晴らしい。
 こないだ放映された『アイ・アム・レジェンド』も、誰もいなくなったニューヨークでひとりぼっちのウィル・スミスが送る日常生活をつづった前半の描写が面白い。路上の好きな車に乗り放題、そこらのショップでDVDも借り放題、友達は犬だけ、街は自分が知っている街のままに、ただ誰にも遠慮がいらなくなった世界。夜は出歩けないが、それも何やら雨戸を閉め切った台風の晩のようでそう悪くない。
 それが懐かしいような気持ちがするのは、誰しも子供のころにそういう世界を多少なりとも夢想したせいか。孤独とひきかえに、誰にも監視されず誰にも構われない世界へ解放される空想は、あるいは透明人間願望(乱歩風にいえば隠れ蓑願望)にも通じるところであろう。あの無人と化したニューヨークは、乱歩にとっての押入れの中でもあったのだ。
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